ルルドの8月15日(聖母被昇天祭)/巡礼に訪れる人々を 厳戒態勢の街が迎える 【フランス旅】

ルルド聖域(フランス)

Basilique Notre-Dame-du-Rosaire de Lourdes

 

軽い気持ちで訪れてしまってもよいのだろうか――。
信仰心も 信心深さも無い私は、そんな不安をちょっとだけ胸に秘め、ポー空港(Aéroport Pau Pyrénées)に降り立った。
(※2016年の夏のことです。)

ここからカトリックの聖地ルルドまで およそ60㎞。
車で 1時間30分ほどだ。

ルルドの町のことを知ったのは随分前のこと。とても真面目そうなテレビ番組の中だった。

「ここに来られた」ことで嬉しそうにしている人たちの ささやかな笑顔や、地面に膝をつき真剣に祈っている姿といった、巡礼者の方々の様子を見ながら、「いつかこの町に行ってみたい」。何となく、そう思った。

ただ、調べてみれば そこはカトリックの一大聖地。
巡礼者は世界中から訪れ、年間の訪問者数は 500万人とも600万人とも言われている。

沐浴をしたり、泉から湧き出る聖水を飲んだり 持ち帰ったりと、病を癒すため、奇跡を信じ、重厚な思いを抱いて訪れる人も多い。

 

 

町じゅう 通行止めばかり。 何故?


ルルドの町の西側から 車で市街地へ入ろうとしたところ、町の入り口付近に、コンクリートの大きな塊と一緒に「Route Barrée」(通行止め)の看板が置かれ、通行規制が敷かれていた。

あらら、そうですか。工事か何かやってるのかな・・・。
それなら と 来た道を戻り、迂回して北側からメインロードに入ろうとすると、またもや「Route Barrée」(通行止め)。

うぬぬ・・・。
再び来た道を戻り、今度は町の南側から・・・。
街なかにも ところどころ通行規制が敷かれている。くねくねと細い路地を使いながら、やっとの思いで宿にたどり着いた。

何故、こんなにも道が規制されているのだろう・・・。
しばらくして、その理由がわかった。

ちょうど1ヶ月前の 2016年7月14日 。
日本で「パリ祭」と呼ばれている フランスの革命記念日(Le Quatorze Juillet)に、ニース(Nice)で起きた 車両による テロ事件が影響していたのだ。

祝祭の花火見物のため、人がたくさん集まっていた ニースの プロムナード・デ・ザングレ(Promenade des Anglais)に 大型トラックが突っ込み、86名の方が亡くなり、400人以上の負傷者(AFP通信より)が出た。

つまり、大きな行事があり、人が大勢集まる場所が また狙われる恐れがあるということなのだ。

フランスは 翌日の 8月15日、聖母被昇天祭(L'Assomption)を迎える。
そのため ルルドには、この日を目指し、多くの巡礼者が訪れている。

実際、参道沿いの土産物屋や飲食店は とても賑わっていたし、町はずれにある駐車場では、カラフルな大型観光バスから たくさんの人が降りてくる。

まるで日本の温泉街のように林立する大小のホテルも、その多くが満室のようだ。

街には 機関銃を携えた警備兵の姿もあり、サンクチュアリ(聖域)と呼ばれるエリアに入るには、持ち物検査が必須になっていた。

そして、車道には、車が暴走できないように、通行止めのコンクリートが置かれたり、工事用の重機などを置いて時差式に交通規制を敷くなど、外来車両が簡単に侵入できないようにしていたのだ。

 

車の暴走や侵入を防ぐバリアーとして置かれている重機車両

 

さて、この厳戒態勢のなか、街を散策したり、サンクチュアリ内部を見学することになるのだが、冒頭に記した、この聖地を「軽い気持ちで訪れてしまってもよいのだろうか」といった 私の不安な気持ちは まだ、宙に浮いたままでいる。
つづく

 

2021年08月15日