ゲンゲンバッハの市庁舎
<前回記事のつづきです>
慣れないドイツの地で、フランスでも経験したことがない 駐車違反の切符を切られてしまった私。
宿のお姉さんに教えてもらったとおり、罰金を支払うために市庁舎へとやって来た。
1階の中央扉を開けると正面に大階段。左右に部屋はあるものの、事務室は2、3階にあるような感じになっている。
全体的に薄暗く、人の気配をあまり感じない。
2階へ上がると 扉の開いた部屋が一つだけあり、そこから明かりが漏れている。話し声が聞こえてきた。
「す、すみませーん」声をかけて中に入る私。
年配の女性二人が輪転機のようなものを回している。
「何かようですか?」と、おそらくドイツ語で 彼女たちが応じてくれた。
手前にいる女性に駐禁切符を見せ「この支払いをしたい」と拙い英語で言ったが通じない。
ヤバい。ドイツ語は全くわからないし、どうしよう。。。
もう一度、今度はゆっくりと単語単語を区切った英語で「私、したい、支払い、これ、どこ?」
今度はこちらの意図が伝わったようで、女性は「トゥモロー」と言って上を指さした。
「明日、3階へ行きなさい」ということのようだ。
確かにもう5時を過ぎている。事務所はもう閉まっているのだろう。
「ダンケ」とりあえず知っているドイツ語で礼を言い、私はトボトボと階段を下った。
明日朝には町を離れることになる。それまでにこの問題を終わらせないと・・・。
そんな焦りや不安もあったけれど、こうなったら仕方がない。駐禁のことは忘れ、とりあえず今日は街を散策だ。
私はポケットから街の地図を取り出した。
表通りとは異なる雰囲気を持つ裏通り「エンゲルガッセ(Engelgasse) 」。
木組みの民家が立ち並び、静かで、とても情緒にあふれている。
たぶん、何か童話の一説をモデルにした人形たち(オブジェ)なんだろうけれど、
剣道の技「抜き面」一本! にも見えてしまう。。。
ヨーロッパの町は、夜、明る過ぎず穏やか。
ゲンゲンバッハの夜も、とても雰囲気が良い。
―― 翌朝。
翌朝、市庁舎前のマルクト広場に小さな市が立っていた。
おお、いい感じ・・・雰囲気の良さに魅せられ辺りをウロウロしてしまう私・・・おっと、いけね。罰金を払いに来たんだった。
市庁舎の扉を押し開け、昨日言われた3階へと上がった。
幾つか部屋があったが、そのうちの一つにいた女性に声をかける。「すみませーん」
女性は「ハロー」と明るくこっちへやって来た。
違反切符を見せて「これ、払いたいんですけど」と言うと、「わかったわ。こちらへどうぞ」と奥の事務室みたいなところに通された。
係の男性に何やら伝えている。
私は男性に切符を渡した。
男性は、どこかから小さな金庫を持て来て、「では、10ユーロになります」とニッコリ言う。
10ユーロ紙幣を渡し、指定された場所にサインをする私。
男性は手書きの領収書みたいなものを発行してくれ「はい。どうも」
私としては、昔、日本で違反切符を切られたときの経験から、もっと厳めしい感じでコトが進むのではと不安だったのだが、えらくアッサリ手続きが終わる。
不安が解消されたせいか、係のお兄さんと「ここは美しい町ですね」とか「今日はいい天気でよかったね」などと、私はいつものお調子者観光客に戻っていた。
市庁舎から出て、美しい朝市をしばし見学していると 歩道の片隅にパーキングチケット発券機を発見。
「あー、昨日 もっと注意して見ておけばよかったぁ・・・」
慣れないドイツでの駐車にもっと慎重になるべきだったと、大いに反省するのでした。