市庁舎前のマルクト広場に立つ 小さな美しい市。
普段はフランスやイタリアの町々を紹介しておりますが、今回はドイツの町をご紹介します――。
アルザスの中心都市ストラスブール(Strasbourg)から、ドイツとの国境=ライン河を越え、車で30分ほど行った辺りに、ゲンゲンバッハという小さな町がある。
面白い名前だなぁと チョイと調べてみたら、ある紹介文に「宝石のような町」とある。
そんなことを言われてしまったたら、是非とも行ってみたくなるのが人情ってもの。
アルザスの村々を回る旅の最中、1日をゲンゲンバッハ訪問にあてることにした。
せっかくだからドイツの他の町も訪ねてみよう!
そう考え、ハスラッハ・イム・キンツィクタール(Haslach im Kinzigtal)、シルタッハ(Schiltach)、ヴォルファッハ(Wolfach)、そしてビールで有名なアルピルスバッハ(Alpirsbach)などを回り、夕方、ゲンゲンバッハに到着した。
車の中から町の様子を少し眺めただけで、人気のある町であることが解った。
三方が塔で囲まれた小さな町には、清潔感のある美しい建物が並んでいる。
観光客でごった返しているといった感じは無く 程よく賑わっていて、町を歩く人も、カフェで寛ぐ人もみな 何だか楽しそうだ。
宿の近くまで車を進めたが、周辺は車を停められそうにない。
空いている場所を探す。
私としては、できるだけ宿に近いところに、駐車スペースを確保したかった。
車から宿へ荷物を運ぶのに、便利だからだ。
車の数が多いわけではないのだが、町が小さいため、空きスペースがなかなか見つからない。
しかたなく、そのままぐるっと街を一周して再び宿の近くへ戻って来ると、近くのブティックの前に停まっていた車が一台 出発するところだった。
ラッキー! 私は、すぐさまそこへ車を停めた。
荷物を持って宿へ向かった。
実はこの時期、宿は宿泊者数を制限しているようで、レセプションの受付時間も制限されており、そのことは予約の際に聞いていた。
よしよし、指定の時間内に到着できたぞ。
そう思いながら入口からちょっと奥まったところにあるレセプションへ行くと、先客がいる。
どの客も、制限時間内の到着を目指して来ているのだろう、少しのあいだ待つことになった。
間もなくして、私の番が来た。
滞りなくチェックインを済ませ、部屋に案内され一息。
そしてすぐ、再びレセプションに戻って宿のガレージの位置を確認した。
「OK。じゃぁそこに車を移動します。ダンケ!」私は レセプションのお姉さんに礼を言って 車へと戻った。
先ほど車を離れてから、15~20分くらい経っていたと思う。
車のワイパーのところに紙が挟まっていた。
時々、観光地の駐車場などでこういうことがある。
近くのワイナリーなどが、営業活動として、広告のチラシを挟んで行くことがあるのだ。
きっと今回もそうだろうと紙を引き抜くと、何やらいつもと体裁が違う。
レシートのような紙に、ドイツ語の細かい文字がつらつらと書かれている。
ん? これってもしかして・・・。
車を宿のガレージへ移動したあと、私は再び レセプションへ赴いた。
レセプションでその紙を見せると、お姉さんがとっても辛そうな表情で「申し訳ございません」と言う。
「駐禁ですか? これ」
「はい。大変申し訳ございません。私が もっと早くご案内をすれば・・・」
「いやいや、それはこちらも同じで、もっと早く確認しておけばよかったわけで・・・それで、これ、罰金ですかね?」
「はい。そうなってしまいます。本当に申し訳ございません。」
文句を言われることはあっても、こんなに謝られた経験が フランスでは無かったので(笑)、私はちょっと戸惑いながら、逆に申し訳なくなり、
「大丈夫ですから。本当に」と彼女を慰める感じに・・・。
ドイツ人は真面目だという話をよく聞くが(いや、フランス人が不真面目というわけではないですからね。決して)、それを実感したような気がした。
自分に責任があると本気で謝るレセプションのお姉さんもそうだし、僅かな時間にキッチリ駐禁を捕る係員もそう。
罰金を取られて、あぁ~っと思う反面、フランスとのギャップにちょっと可笑しさも感じて、何だか面白いなぁって・・・(いや、けっしてフランスが真面目でないと言っているわけではないですからね、本当に。だってイタリアに比べたら・・・あっ、いや、えっと、その~、真面目も良いことですけれど、真面目になり過ぎない「ゆるさ」も大切だと思いますし、それが大好きなところでもあります。)
「罰金の支払い方法を教えていただけませんか」と私。
「この口座へ振り込むか、市庁舎へ行くか」とお姉さん。
「わかりました。振込みはできないので、市庁舎へ行ってみますね」
「申し訳ございません」お姉さんの辛そうな表情に、
「大丈夫、大丈夫、本当に気になさらないで」こっちが申し訳なくなってしまう。
そして早速、市庁舎へ行ってみることにした。
<つづく>