自由や寛容を象徴しているよう。ローマのクリスマス・ツリーと翌朝のテロ情報 【イタリア旅】

 Stazione di Roma Termini / Roma

 

上の写真は2005年のクリスマス時期に、テルミニ駅(Stazione di Roma Termini)の前に飾られていたクリスマス・ツリーを撮影したもの。

一般的にツリーは、様々なオーナメントで飾られることがよくあるが、このツリーの装飾は、オレンジとブルーの電飾以外に何もない。
飾りはないものの、ツリーの下の方には、紙切れのようなものがたくさんぶら下げられている。
そしてその周りには、少なからず人が集まっている。

何があるのだろうと 見に行ってみる。

すると、そこには・・・
ひときわ目を引く、ぶら下がった状態の「アート作品(絵)」。
ビックリマークいっぱいの 七夕かと思うような「願い事」。
どこかのレストランの 切なる「求人情報」。
特徴が詳しく記された「探し猫」の写真。
などなど・・・。

ツリーの管理者サイドが こうなることを見こして建てたのか、それとも 図らずもそうなってしまったのかはわからないが、クリスマス・ツリーは 何でもありの 情報発信的ツールとして使われてしまっていた。

良く言えば「寛容」で「自由」。悪く言えば「無秩序」なのかもしれないが、この駅前ツリーの在り方が、まさにイタリアを象徴しているようで、面白かった。
今のように スマホで、何でも発信、何でも検索ができなかった時代のことだ。。。

 

翌朝、ホテルのレセプションで・・・

その夜、テルミニ駅近くのホテルに宿泊し、
翌朝、チェックアウトをするためレセプションに立ち寄った。

「ブォンジョルノ(Buongiorno)」と私。
すると、「ぉあよーごじゃまっ!」と、レセプショニストのお兄さんが 元気な日本語で返してきた。

「え? 日本語を話せるのですか?」
「あい。チョット」彼は、日本に数週間 滞在した経験があると言った。「オーミヤの コーコーに チョットあいだ リューガク 行きました」
「大宮へ。そうですか」

「ローマの町ぃ、とても楽すぃーですか?」彼が笑顔で訊いてくる。
「昨夜着いたばかりで、しかも今回ローマは1泊だけなので、あまり町を回っていないのです」
「・・・」
ちょっと日本語が難しかったかな。私の返事を聞いた彼は 一瞬 ポカンとしてしまった。

「えーと、今わぁ、どこぉ 行きますか?」
「これからオルヴィエートへ行きます」
「Orvieto。あい。わかりまーす」この日本語は通じたようだ。

「えーと、あなた よく眠りましたか?」宿でよく聞かれる質問だ。
「はい。よく眠れました。ありがとうございます。とてもいいホテルでした」

私がホテルのことを褒めたからか、気を良くした彼は、そのまま日本語で話を続けた。
「小さなテロがありました」
「え?‼」
「これは小さなテロでーす」

2001年9月11日にアメリカで起きたあの同時多発テロ以来、欧米諸国では「テロ」への不安が常に付きまとっている状況だった。
前年の2004年3月には、スペインのマドリッドで列車爆破テロが、この年(2005年)の7月にはロンドンで同時爆破テロが起こっていたこともあり、次はどこそこの町が狙われるとか、クリスマスが危ないなどと、まことしやかに言われている時期でもあった。

「テロ ?!! どこで?」私はすかさず訊いた。
「駅から近いでーす」
「えっ、テルミニ駅の ?!!」だとしたら、現場はすぐこの近くではないか。この時の私の顔色はおそらく変わっていたと思う。このまま外へ出て大丈夫なのだろうか。いや、しばらくは安全のためホテルに留まり状況を確認すべきだろう。

「あい。歩いて3分でーす」
「歩いて3分・・・へ?」何? 何言ってんの?
「とても小さなテロでーす」
「・・・」

既にお気づきの方もいるかもしれない。
実は彼、私に対し、片言の日本語で、自らのホテル紹介を してくれていたのだ。

イタリア人はハヒフヘホの発音が苦手。その音自体を出せない場合もある。
そのため、彼が言ったつもりの日本語フレーズ「小さなホテルです」が、実際に発された音として、「小さなテロでーす」と なって私の耳に 届いていたのだった。

ビックリしたなぁもう。。。

 

 

 

2021年12月15日