プツリ途中で切れていた「サント=マリー=ドゥ=ラ=メール」への道 ② 【フランス旅】


前回記事で、エグ=モルト(Aigues-Mortes)からサント=マリー=ドゥ=ラ=メールへ向かう道程で急に渋滞が発生し、原因が前方にある川であることを書いた。

そして、すぐに渋滞が解消しないことがわかると、イライラすることもなく、各々が好きなように のんびり過ごす人々の様子が とてもいいと・・・。

今回は、その つづき。


川の手前に信号と遮断機があった。
遮断機の横にある看板(冒頭写真)には こうかかれている。

 

BAC DU SAUVAGE (大自然の渡し舟)
渡り料金 無料

サービス時間帯
4月 から 9月:6時~12時/13時30分~20時
10月から3月:6時30分~12時/13時30分~19時
30分毎

 

なるほど、そういうことか。

場合によっては、来た道を戻り、違う道を使ってサント=マリー=ドゥ=ラ=メールへ行くことも考えたが、いやいや、このまま行くのも面白い。
渡し舟が動くのを 待ってみよう。。。

川岸で20分ほど待っていると、にわかに辺りがザワザワしだした。
車外に出てのんびりしていた人たちが、パラパラと車に戻ってゆく。
もうすぐ舟が動くのだ。

私も車に戻り、エンジンをかけた。
車列がゆっくり動き出す。ああ、やっとだ。嬉しい。。。と思いながらノロノロ車を走らせていると、また車列が止まった。

そのうち動き出すものと、ハンドルを握ったまま待っているが、やはり一向に動かない。
前方に並んでいる車から、先ほどのように人々が降りはじめた。
結果、車列は数十メートル進んだだけだ。

 

お昼を除き30分毎に1往復する渡し舟「BAC DU SAUVAGE(大自然の渡し舟)」

 

ここはフランス、日本ではない

渡し舟は決められた時間に、きちんと仕事をした。
しかし結果的に、私は対岸に渡ることはできなかった。

というのも、舟は30分に1度、1往復するだけなのだ。
しかも舟は、それほど大きくはない。

車、バイク、自転車、人、そして、この場所が カマルグ自然公園(Parc naturel régional de Camargue)の中ということもあって馬などを乗船させるのだが、当然、一度に乗せられる数や量は限られている。

人や自転車は場所を取らないので、後から来てもすぐに乗れる場合があるが、車はそういうわけにいかない。
30分に1度の1往復に、先着の数台だけが乗船できるというわけだ。

私としては、こんなにも車(お客様)が並んで待っているのだから、その時間になったら舟は何度か往復してくれて、とりあえずは そこにいる 全ての車を対岸へ運んでくれるんじゃないかなぁ・・・と考えていた。
川幅も100mほどと 広くないので、時間もそれほど必要としない。

それが甘かった。
ここはフランス、日本ではない。

お客さんが待っていようと、彼らは決められた仕事だけをきちんとする。

客は、サービス提供者側が決めたルールに従うのが当然で、働いている人からすれば、自分は客と対等の立場、もしくは、この場を任されている上の立場と認識しているのだろう。

場合によっては、舟の担当者が 何往復かしてくれることもあるかもしれない。
それについてもサービス提供者側が決定権を持って主導し、客はそれに従うしかないということだ。

今の日本では おそらく、この対応はできない。
待っている人がいるのだから、もう数往復するように要求されるだろうし、それを拒めばクレームになる。

いや、反対に、もともとのサービスとして何往復もしているかもしれない。そして、常にお客様をお待たせしないよう 最大の配慮と システム構築をするに違いない。(これはある意味、素晴らしいことでもある。)

更に、細かいクレームも出ないように細心の注意を払い、例えば・・・「今朝ほどの渡し舟では、乗船する馬の数が多かった関係で5分ほど遅れてしまい、誠に申し訳ございませんでした」みたいなことまで、アナウンスするんじゃないだろうか。

いやいや、それどころか 既に公共工事によって、この辺鄙な場所、大自然の中に、通行料2,160円くらいの、立派な橋を架けてしまっているかもしれない。。。

 

およそ1時間待って、やっと乗船された皆さん。誰一人文句は言いません。

 

・・・ということで、渋滞の先頭にいた数台の車が舟で対岸へ渡り、残りは次の、もしくは次の次の、更にはその次の運行まで待つことになる。

結局私は、次の運航時に乗船することができた。

その舟にかろうじて乗れたことは、運が良かったのかどうかはわからないが、私は目的地である サント=マリー=ド=ラ=メールまで あと少しのところで、およそ1時間 足止めを食ったことになる。

この時間をロスと考えるか、、、
いや、一緒に舟に乗っている皆さんも楽しそうにしているように、旅のよい思い出の一つになった、と言えるだろう。

 

※私がここを訪れたのは2013年のことです。現在は様子が変わっているかもしれません。

 

 

2020年10月05日