Grammichele/Sicilia/ITALIA
20年ほど前のこと。
シチリアに滞在していた折、陶器の生産や、大階段(スカーラ)で有名な カルタジローネ(Caltagirone)へ向かおうと 地図を眺めていた。
当時はまだ「Googleマップ」なども無く(もしかしたら 既に存在していて、単に私が使えなかっただけ なのかもしれないのですが・・・)、現地で買った
紙の地図を見ていて、目的地や道程とは別に、ふと目に留まった町があった。
何故、目に留まったか。。。
それは、地図上の町が、とても興味をひく 面白い形をしていたからなのだが、面白いと言っても、仏さまの姿に見えるとか、ドラえもんの顔に見えるとかいった、そういうのではない。
ただ単に、そこに 町の形状として、「正六角形」があったのだ。
単に六角形と言うと、大して面白くもないように感じるが、整いすぎた輪郭を持つ町というのは、逆に異様に見える。
ハッキリとした 正六角形の形があり、それが町の主要部分を象っている。
町の成り立ちを推測するに、いつのころか まず六角形の町が作られ、そこを中心に 現代の街が拡がっていったのだろう。
六角形の内部には、うねうねとしたカーブ路はなく、ある程度 秩序だった様子で、直線の路が 細かく張り巡らされている。
全体のシルエットは まるで「雪の結晶」のよう。
あるいは、「蜘蛛の巣」に例えても 良いかもしれない。
地図上に浮き上がる その造形の美しさに 一気に興味がわき、カルタジローネへと向かう途中、立ち寄ってみることにした。
地図で 町の形を見て「面白そう!」と 訪れてみたが・・・
町の中は 至って普通の イタリアの町
グランミケーレの街角にあった看板地図(冒頭写真)を見て「おおー。六角形だぁ!」と、ちょっぴり感動したのも束の間、実は それ以外に 六角形を感じる場所がない。
道路の交差角度が90度でないのはわかるが、そんなのは どこの街にもあり、珍しくない。
唯一「六角形」を体感できそうな、町のド真ん中「サンタ・マリア・カラファ広場」(Piazza Carlo Maria Carafa)は、運悪く
工事中で入れない。
結局のところ、町を俯瞰で眺めれば「六角形」の姿を捉えられるが、地上から見える景色は、普通の町と 何ら変わりない。
今ならきっと、ドローンなどを使って 六角形を楽しむことも、考えられないではないが、当時は、そんなこと 想像だにしていない。
ということで、「雪の結晶みたいで美しい!」と感じ、盛り上がったあの思いは、敢えなく萎んでしまった。
ただ、別の観点から、この街の姿について考えてみると、
六角形に作られた理由とは、「雪の結晶」などと 私が思ったような呑気な理由ではなかろう。
おそらく、戦いのため、町を守る防衛上の理由ではないかと思うのだが、要塞都市にありがちな 堅牢な門や城壁などは目にすることもなく、詳細についてはよくわからない。